こんにちは、syuyaです。
日本の裏社会に存在するヤクザ組織。
一般に、暴力を背景に犯罪行為などによって収入を得ている人々を指し、警察庁の調べによると2022年度末における構成員・準構成員の数は2万2400人であるとされています。
全盛期である1963年の18万5000人に比べると、その数は激減しましたが、依然としてその黒い影響力を日本社会に及ぼしているようです。
恐ろしいですよね。
そんなヤクザ社会において、その筋の人間にのみ通じるいわゆる”業界用語”のようなものが存在しています。
これらの言葉を使っているなら、その人間はもしかしたら裏社会の人間なのかもしれません。
この記事ではそんなヤクザ・暴力団の業界用語をご紹介します。
ヤクザ・・・賭博における一番悪い目
極道の事を”ヤクザ”というのは皆様はご存じかと思いますが、それではそのヤクザというのはどこから来た言葉なのでしょうか?
諸説ありますが、一番有力とされているのが、カブ賭博の一種である三枚ガルタにおける、最悪の数字の組み合わせである”3・8・9”の目の組み合わせが元とされています。
”8・9・3”→”ヤクザ”となった訳ですね。
ヤクザの発祥は中世の日本における博徒集からとも言われており、賭博とヤクザとは切っても切り離せない密接な関係にあると言えます。
また、時は下り現代のヤクザ組織も、その源流によって博徒系と的屋系の組織に二分されています。
博徒系とは、主に賭場の開帳によって収入を得ていた組織の事で、山口組や住吉会、稲川会などがここに分類されます。
的屋系とは、主に祭りの縁日などに露店を出したり興行を行ったりして収入を得ていた組織の事で、極東会や飯島会などがここに分類されます。
博打における役に立たない目から転じて、社会に役に立たない者達、又はその日暮らしをする者達を指して”ヤクザ”と呼ぶようになったと言います。
そのため本職の人々は”ヤクザ”という名称はあまり使わず、”極道”などを使ったりします。
エンコ・・・指
ある意味、最も有名なヤクザ言葉とも言えるこの言葉”エンコ”。
その由来は、人形浄瑠璃の手である”猿猴(えんこう)”とされています。
淡路人形浄瑠璃の様子
画像引用 https://kuniumi-awaji.jp/heritage/28nigyojoruri/
ヤクザ社会で何か失態を犯した際に、そのけじめとして指(エンコ)を切り落とす通称”エンコ詰め”という風習があります。
これは小指を切り落とす事により、深い謝罪と反省の意を表すと共に、指を欠損させることで刀などを持つ手に力が入らないようにさせるのが目的とされています。
しかし、昨今の暴力団の取り締まりの強化などにより、エンコ詰めを強要した親分が罪に問われる場合も多くなったため、このような風習は廃れつつあるようです。
ドス・・・小刀
小刀を表わす”ドス”の由来は「脅す」からです。
古くの任侠界において極道は懐に小刀を忍ばせておいて、相手を脅す際にそれをチラつかせていました。
そこから”おどす”の”お”が取れて”ドス”となったようです。
当然ながら、ナイフなどをチラつかせて脅す行為は脅迫罪という立派な犯罪です。
生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する。
刑法222条1項 より
また、一定の刃渡り以上の刃を有するナイフを携帯していた場合は銃刀法違反です。
その為、ヤクザといえど、むやみやたらとドスを持ち歩き、一般人を脅迫するという事はしません。
あくまで必要になったら・・・という事です。
チャカ・・・拳銃
”チャカ”は拳銃の事を指します。
”ハジキ”とも言います。
由来は引き金を引く際の”カチャ”という音を逆にしたものです。
暴力団の所持する拳銃の主な仕入れ先としては、主に近場であるロシア、中国、フィリピンなどから密輸されることが多いようです。
警察庁ホームページより、ヤクザの暴力団の主な密輸ルート
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h15/html/E1103032.html#:~:text=%EF%BC%88%E3%82%A2%EF%BC%89%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%94%E3%83%B3%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%BE%B4,%E7%AD%89%E3%82%82%E6%95%A3%E8%A6%8B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82
当然のことながら、日本においては銃の所持、携帯は禁止されています。
その為ヤクザも”チャカ”の隠し場所には細心の注意を払い、いつ警察が家宅捜索に来てもいいように、そうそう見つからない場所に隠してあるのが普通です。
シャバ・・・刑務所の外の世界
”シャバ”とは刑務所の外の、いわゆる一般社会の事です。
由来は仏教用語である”娑婆”からです。
俗っぽいダサい人間の事を”シャバ僧”等と言ったりします。
ところで皆様は、刑務所にランクがあることはご存じでしょうか?
日本には少年刑務所も含め、66の刑務所があります。
刑務所には収監される囚人の犯罪傾向などによりランクがあり、ヤクザの場合は犯罪傾向が進み尚且つ10年以上の長期刑が適用されるLB指標の刑務所に収監されることが多いようです。
全国の刑務所とそのランク
引用 https://www.moj.go.jp/content/000113607.pdf
シャブ・・・覚せい剤
シャブとは覚せい剤、つまりメタンフェタミンの事です。
化学式はC10H15N。
発明したのは日本人で、1888年に日本の薬学者長井長義によって合成されました。
その恐ろしい副作用が判明するまで、日本では疲れをとる薬として”ヒロポン”の名称で一般に販売もされています。
医薬品として販売されていたメタンフェタミンの広告(大正製薬)
シャブの由来は諸説ありますが、一番有力なのが
”一度覚せい剤に手を出したら最後、死ぬまで人生を覚せい剤やその売人などにしゃぶりつくされるから”
というものです。
恐ろしいですね。
覚せい剤の呼び名は、他にも”ヒロポン”、”スピード”、”S”、”つめたいの”などがあります。
また、覚せい剤を小分けして入れておく小袋を”パケ”と言います。
覚せい剤の価格は、末端価格で1グラム当たり7万円ほどとされています。
このように随分と高値で売れる事から、闇社会において覚せい剤の売買はとても大きなビジネスとなっているようです。
覚せい剤の主な仕入れ先は中国ルート、北朝鮮ルートがあるとされています。
あやをつける・・・因縁をつける
極道の世界において他人に因縁をつける事を”あやをつける”と表現します。
語源は”文句をつける”の”文”の字が”あや”とも読む事から、”文句をつける”→”あやをつける”となったようです。
敵対する組織や一般人に因縁をつけて強請るというものは、古くからあるやくざの常とう手段です。
皆様ももしやくざに”あやをつけ”られた場合は、一人で悩まず警察や弁護士などに相談しましょう。
しのぎ・・・やくざの収入源
やくざにとって収入源の事を”しのぎ”といいます。
ヤクザの大きなしのぎとしては、覚せい剤など麻薬密売、恐喝行為、競馬などのノミ行為などが主だったものです。
平成3年度と令和4年度の主なヤクザの収入源の比較
データ・画像引用 https://www.boutsui-osaka.or.jp/01jyousei/jyousei02.html#:~:text=%E6%9A%B4%E5%8A%9B%E5%9B%A3%E3%81%AE%E3%80%8C%E4%BC%9D%E7%B5%B1%E7%9A%84%E8%B3%87%E9%87%91,%E3%81%A7%E6%8E%A8%E7%A7%BB%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
蒸気のデータから読み取れるように、覚せい剤売買を除く恐喝やノミ行為といった伝統的なしのぎは減り、代わりに詐欺やその他の種類の”しのぎ”が増えたようです。
新たに各都道府県で制定された暴力団排除条例などにより、やくざという稼業も大幅な変革を迫られているようです。
タタキ・・・強盗する事
ヤクザ社会において強盗をすることを”タタキ”といいます。
語源については強盗に入った家の寝ている被害者を”叩き起こす”ことからとされています。
因みに強盗で逮捕された場合、5年以上の懲役です。
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
刑法236条 1項
強盗は未遂であっても有罪です。
第235条から第236条まで、第238条から第240条まで及び第241条第3項の罪の未遂は、罰する。
刑法234条
強盗の上人を殺害した場合、死刑もありうる重罪となります。
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
刑法240条
これらの事から、たとえ暴力団員であっても、タタキにはそうそう手は出せないのが実情です。
デコ・デコ助・・・警察の事
”デコ・デコ助”は、刑事や警察官などの事を指します。
名前の由来は、警察官の帽子のおでこの所にある記章が由来です。
警察官の制帽
画像引用 https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g1033520468
また警察を表わすジェスチャーとして、”おでこを指さす”というものもあるようです。
こちらも、警察の制帽の記章を指しています。
警察組織の中には、暴力団を取り締まる部署として組織犯罪対策部(旧刑事部捜査第四課、暴力団対策課、通称:マル暴)と言う部署が存在し、そこに所属する刑事はヤクザをも恐れさせる存在として知られています。
そんなマル暴による、暴力団本部への家宅捜索(通称:ガサ入れ)の様子は、テレビで放映されるや否や、
どっちが暴力団か分からない
と視聴者を驚愕させ、話題となりました。
上記の動画で、怒鳴り込んでいる方が刑事(マル暴)です。
とても怖いですが、我々市民からすれば心強い存在ですよね。
みかじめ料・・・用心棒代
”みかじめ料”とは、暴力団の縄張り内で商売をするお店が暴力団に対して支払うお金の事です。
支払いを拒否した場合、組織の力を利用しての脅迫やいやがらせなどをしてきます。
別名を”ショバ代”、”カスリ”等とも言います。
暴力団の報復を恐れて警察に相談できず、長年払い続けていたお店も多かったようですが、1992年に施行された暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)により取り締まりが強化されて以降、徐々にみかじめ料を払うお店は減っていったと言います。
もんもん・・・入れ墨
”もんもん”とは、主に背中に入れる和彫りの入れ墨の事です。
言葉の由来は、”倶利伽羅紋々(くりからもんもん)”から。
ヤクザや博徒などが、背中に掘った倶利伽羅竜王の入れ墨の名称が由来です。
倶利伽羅竜王とは、五大明王のひとつである不動明王の竜王としての姿の事です。
転じて、入れ墨全体を指して”もんもん”というようになりました。
倶利伽羅竜王の入れ墨 (浅草 彫やす様制作の作品)
画像出典 https://www.horiyasu.com/kurikararyuou
まとめ
いかがだったでしょうか。
ヤクザ社会の業界用語を知ることにより、その知られざる実態の一端を垣間見ることができたのではないかと思います。
またその言葉の成り立ちは、民俗学的にもとても興味深く、ルーツを辿れば思わぬところに行きつくこともあります。
皆様も教養として、これらの知識を学んでみてはいかがでしょうか?
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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